名古屋の弁護士 大久保守博の離婚問題レジュメ②
よく相談されることが多いの離婚問題について,レジュメ風回答の第2回目は,「調停離婚」についてです。
2.調停離婚
(1)調停離婚の意義
離婚の協議が成立しない場合,離婚を求める当事者は直ちに訴訟を提起することはできず,訴訟提起前にまず調停にかけられる(調停前置主義。家事審判法18条)。
この調停で離婚が成立する場合を調停離婚という。調停はあくまで当事者の合意を基礎とするが,調停であることから,離婚の合意の斡旋の前に,まず離婚を回避すべく当事者を説得するのが通常となっている。
この点において,いわゆる破綻主義は後退している。離婚の調停が成立し調書に記載されると,確定判決と同じ効力を生ずる(家事審判法21条1項本文)。但し,本来は審判で処理されるべき財産分与・子の監護等に関する調停は確定審判と同一の効力となる(家事審判法21条1項但書)。
(2)申し立て
ア 方法
家庭裁判所に対して,「夫婦関係調整調停」の申し立てをする。申し立ては,申立書に戸籍謄本を添付して,持参もしくは郵送で行う。申し立ては,制度上は口頭でも可能となっているが(家事審判規則3条),字の書けない外国人等の場合に限定して口頭での申し出を認める運用がされている。
イ 管轄
相手方の住所又は合意で定める他の家庭裁判所である(家事審判規則129条1項)。例外(家事審判規則4条1項但書)はあるが,相手方の勤務地が管轄内にあり,相手方の出頭が見込める場合程度しか例外は認められていないようである。このような例外を認めてもらいたい場合は,事情を記載した上申書を申立書に添付すべきである。
ウ 記載事項
申立書には,申立書付票の事項の他,当事者に関する情報や調停手続進行上の注意点等があれば,記載した方がよい。既に婚姻費用の調停等同一当事者間の事件が係属している場合には,審判に移行している場合以外は,調停が一緒に進行するよう家庭裁判所が配慮するので,当該事件の番号と係属部を記入すべきである。
エ 当事者の能力
意思能力のない者に対して離婚調停は起こせず,成年後見人等が法定代理人として調停を起こすことも出来ない。よって,これらの場合には,当初より訴訟を提起可能である。ちなみに,被成年後見人の場合,調停の時点で意思能力があれば,医師たる裁判所技官の診断を得て(家事審判規則7条の6,137条の2第2項)調停を成立させることは制度上可能だが,慎重を要する離婚の性質上,訴訟提起の方が望ましい。
なお,離婚訴訟には特別代理人の制度(民事訴訟法35条)は適用されないことから,意思能力のない場合は,後見開始の審判を受けて,後見人より訴訟をすることになる。
(3)調停手続
ア 期日
期日が決まると,家庭裁判所から期日の呼び出し状が当事者に送られる。通常,裁判所から送付される封筒には,裏面に裁判所の住所・郵便番号・電話番号のみが記載され,差出人が裁判所であると一見してわからないような配慮がなされている。たとえ代理人がついていても,調停期日には本人が出席することが基本である。
イ 当事者の不出頭
出頭が見込めない時は,不成立で終了する。相手方が数回不出頭の時,調査官による出頭勧告を求めることが有益な場合もある。申立人が数回不出頭の時,調停をする意思がないものとして「調停をしない措置」(家事審判規則138条)で終了する(「なさず」と表現される)。
呼出状が転居先不明等で戻ってしまった場合は調査し,2回ほど呼び出しても同じであれば,所在不明で取り下げるほかない。この場合は,所在不明によって取り下げた旨の証明を得て,訴訟提起可能である。
相手方が話し合う意思はあるが,老齢や病気により出頭できない時には,調査官による相手方意向調査を利用することも考慮すべきである。
ウ 未成年者の親権
未成年者の親権について合意できない場合は不成立で終了するが,親権者の適格性等について調査官調査を申し出ることが有益な場合もある。その場合,他方当事者の調査官調査に対する意向を聞いた上で,調停委員会がその必要性を判断し,必要性が認められれば審判官が調査命令を出す。
(4)調停の成立
ア 期日
調停によって成立する離婚が調停離婚であり,調停期日に成立するので,本人の意思表示を要することから,必ず本人が出席しなければならない。調停期日に本人が出席できない時は,協議離婚届を作成しておき,その提出を他方当事者に託する方法により,調停を成立させることが可能な場合もある。この場合,調停事項に定める財産分与等については,「離婚届出がなされたことを条件に」等の文言を入れ,離婚が成立しないにもかかわらず債務名義を作ることのないように注意すべきである。
イ 親権者の指定で対立している時
当事者双方に離婚の意思はあるものの,親権者の指定で対立している時は,調停離婚を成立させ,親権者について審判を受けるという方法も可能ではある。しかし,ほとんどの場合は,親権者が決まらなければ,調停離婚も成立しない。
ウ 財産給付で対立している時
当事者双方に離婚の意思はあるものの,財産給付で対立している時は,調停離婚を成立させ,離婚給付ついてのみ調停を続行し,不成立の時には,財産分与は審判に,慰謝料は財産分与の一要素として審判にするか,損害賠償請求として別途地方裁判所に訴えるという方法も可能ではある。しかし,ほとんどの場合は,全て一括して調停不成立にして,訴訟にする。
エ 離婚の合意はできないが,当面の別居の合意はできる時
離婚について合意はできないが,当面の間別居をすることを内容とした合意ができる時は,別居期間中の婚姻費用や未成年者の監護者,別居親との面接交渉等を定めたいわゆる「別居調停」を成立させることもある。
(5) 届出
ア 報告的届出
調停離婚の届出は,審判離婚・裁判離婚(和解離婚・判決離婚)と同様に,報告的届出である。
イ 届出人
申立人が,離婚届に調停調書の謄本を添付して,調停成立の日から10日以内に市町村役場・区役所に,届け出る(戸籍法77条1項,63条1項)。申立人が上記期間内に届出をしない時は,相手方が届出をすることができる(戸籍法77条1項,63条2項)。なお,戸籍実務では,相手方が離婚の際に本籍や氏の選択をしなければならない場合に配慮して,調停調書に「相手方の申出により,調停離婚する」旨の文言が記載されている場合には,相手方からも届出をすることができることとしている。
ウ 届出の方法
協議離婚の場合と基本的に同様であるが,離婚届に他方配偶者の署名押印・証人の記載が不要である点,調停成立の日を記載する点等が異なる。
※本レジュメの主要出典は,「離婚問題法律相談ガイドブック2006年版」(東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会)です。















